皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】

すぐさま彼女を見つけた俺は、気づけば正反対の自分を演じていた。


『美しいお嬢さん、おひとりですか』


抑えきれない感情があるなど、ここに至るまで知るよしもなかった――。


子を宿した上に、密偵までつけるなど、許されることではないだろう。いかれている。


だから、これは俺のわがままなんだ―――。


「アイリス⋯⋯」


医師と侍女が去った皇妃室で、ようやくふたりきりになることができた。

城の医師――ハリスによれば、妊娠の初期による貧血であることと、軽い疲労のせいだろうとのことで少しだけ安堵した。しかし、ガラリと変わった生活環境は大きく影響しているだろう。
詳しくは起床後ということで診察はすぐに終えた。

大きなベッドの真ん中で眠る、小さくて華奢な身体。

顔にかかっていた柔らかな髪と梳いて横に流す。目の前にいると、どうにも自制が効かず触れてしまう。


さぞかし不安だっただろうに⋯⋯。弱音も吐かずに、俺に強気でぶつかってくるところは、相変わらずだな。


ベッドから出る細くて白い指に絡ませ、彼女が今宵ゆっくり眠れるように祈る。


「お前には悪いが⋯⋯俺は、後悔していない」


離れるのが正しいと思った。しかし、こうして目の前にしてしまえば、庇いようのないアイリスという引力に吸い寄せられる。

これ以上のわがままは言わない。


ただ、ただ⋯⋯。共に⋯⋯。アイリス。



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