皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】

『なんで、なんでルイナードがお父さまを殺す必要があるのよ⋯⋯ なぜあなたが――!!』


最後に聞いた声は、もはや悲鳴だった。

城へのトラウマや、俺への殺意で埋め尽くされているであろうアイリスの心。

しかし、それでいい。それでいいんだ。

そうでなければ俺は、彼女の命を奪いかねない。


俺から離れ、無邪気に笑い、花を奏で、人を愛し、いずれ母となれ。


誰よりも彼女の幸を願うのが、俺の唯一の償い。


だというのに―――。


カルムからの報告を受けた俺は、無意識の中で湧き上がる感情を抑えきれなかった。


『カルム、この件は俺が持ち帰る。クロードと話し合ったあと結論をだそう』

『はい、承知しました』


なにをやっている⋯⋯。思う権利すら無いというのに、未練がましい。

俺は自らの行動に、呆れ返った。

そのあと、俺がどんな指示を周囲に出したのかは言うまでもない。

カルムの忠誠心を考えれば、俺が同行すると伝えれば、どういった判断を下すかはわかっていたことだ。その裏でクロードへ同行を命じるという、なんとも卑怯なあり様。

そして、十年間、ずっと遠巻きに見つめていた彼女に再会すべく、公務を投げ出して舞踏会へと駆けつけた。
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