皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
「ん⋯⋯」
大きな身体がモゾリと動き出してベッドが揺れる。
やだ。ど、どうしよう!
ぐるりと部屋を見渡すも、助けてくれそうなサリーとカルム団長の姿はない。
耳を澄ませてみても、廊下どころか周囲に人の気配は全くない。
おそらく完全にふたりきりだ。本当にどうしよう。
焦りが募って目を白黒させていると、ベッドに置いていた左手に温かな感触が触れる。
「っ⋯⋯?!」
正体はルイナードの手だ。まるで何かを探し求めているのかのように、触れると同時に骨張った大きな手が私の手をすっぽりと包み込んでしまう。
それも力強い。寝ぼけているんだろうか⋯⋯。
「ねぇ、ちょっと」
さすがに、このままでいられる器量は持ち合わせていない。
空いた手でほんのり肩を揺さぶると、彼は長い睫毛に覆われた瞼からキラリと黄金色を覗かせて、ゆっくりと覚醒して――。
「――アイリス! 大丈夫か⋯⋯? 体調は問題ないか?」
ぼんやりと私の姿をその瞳に捉えた瞬間、弾かれたように二の腕をわし掴み、距離を詰めてくる。
触れ合う体温と彼の瞳からとても心配していたことが伝わり、どうしたらいいのかわからない。とりあえず頷いて、疑問を口にした。