皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
「もしかして、あなたがここまで?」
「無理をさせてすまない⋯⋯。とにかくお前が無事で良かった。医師には見てもらったが、起床後もう一度来るように伝えてある。それまで眠っていろ」
ホッと表情を緩めたルイナードは、指先で私の頬を撫でて席を立ち上がる。
もしかして、これは気にかけているの?
そして、彼は髪をさらりと手櫛しで治し、椅子にかけてあるローブを手にすると袖を通す。ここから直接公務に向かうのだろう。
お礼くらい伝えたほうがいいだろうか? 寝る間もない公務のさなかここまで運ぶという手間を取らせてしまったのだ。
着々と退室の準備が整っていくルイナードを横目に意地と謝意の狭間でひたすら揺れ動いていると。
そこで、遠慮がちなノックが部屋に響く。
コン、コン。
「失礼いたします⋯⋯ルイナード陛下。クロード様から朝議のお時間とのことです」
彼は「わかった」と短く返事をしてから、退室前に屈んで私と視線を合わせる。
「――では、俺は行く。体調が悪いときは無理をするな。今やひとりの身体ではない⋯⋯。ゆっくり休めよ」
温かい手でふわりと頭をひとなでし、そのまま動きを止めることなく足早に去っていく。
結局、お礼を言うタイミングも逃してしまった。