皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
✳✳✳


――なーど


『⋯ルイナード』

『ん⋯⋯』


どうやら、いつの間にか寝ていたらしい。

ささやくような声が耳に触れて、意識がふんわりと上昇する。


『ルイナード、おねつ、まだあるのね⋯⋯』


この声は⋯⋯。

ハッと目をひらいて、声の方へ寝返りをうつ。

そこには、ベッドの縁からひょっこり顔を出したアイリスが、心配そうに眉毛をハの字にしていた。


『ルイナード⋯⋯だいじょうぶぅ?』

『アイリス。お前⋯⋯こんなところで何を』


まだ頭がぼんやりする。けれど、泣きそうなその顔にどうにか触れたくて、手を伸ばして、ぷっくりした頬に手を寄せた。


あぁ良かった、泣いていない。でもとっても悲しそうだ。


『悪い。風邪が移ってしまうな⋯⋯』

『ううん、移らないよ。アイリスはね、ルイナードの何倍も体つよいの』


そう言って、引っ込めようとした手に、彼女は頬を擦り寄せる。

嫌では無かった。むしろ心地よくて、くすぐったい。

しかし、重ねられる小さな手は何故か、赤く色づき、手の甲には猫に引っかかれたような傷跡が数本ある。

どうしたのだろう? そう思っていると、彼女はハッと思い出したように、ベッドの下からゴソゴソと何かを準備する。
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