皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
『ほんとうはね、“こーたいし様寝てるからダメ”って言われたんだけどね。これ渡したくて』
そう言って、大きなカゴを俺に向けて差しだす。
最も心を突き動かされた瞬間だった。
彼女が大好きなブルースターを真ん中に、オレンジ色のコレオプシスや濃い桃色のダイアンサス。
そして俺が一度だけ『綺麗だな』と褒めたバラだ。
とてもバランスが良いとは言い難く。ゴチャゴチャと欲張った様子で収まっている。
傷は、バラでつけてしまったのか。
声が、言葉が出てこなかった。
ありがとう、さえも軽んじた言葉に感じて。
この気持ちを表現する言葉が⋯⋯見当たらなかった。
代わりに溢れてきたのは、涙だった。
『ルイナード⋯⋯アイリスはね、あなたが好きよ。だから、早く元気になって、一緒に読書しましょうね』
読書は、俺の好きなことだろう。
お前がしたいのは、一緒に花を摘んだり、花の世話をすることだろう。
こういうときこそ、わがままをいえ。
言いようのない、熱くて、苦しくて、嬉しくて
何にも例えようのないもどかしい感情が、喉の奥からガッとせき上がってくる。
俺のために、こんなに指先まで傷つけて⋯⋯。
バカだよ。アイリスは⋯⋯バカだ!
『ルイナード⋯⋯?』
どうしたの? と不思議そうな声が耳につく。
気づいたら、太陽の香りがする小さな体を、引き寄せて胸に収めていた。