皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
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――まさか、こんなことになるなんて。



「アイリス、いつまでドアの前に突っ立っている。身体が冷えるから早くこっちへこい」


呆然と立ち尽くした私を見て、読書をしていたルイナードは痺れを切らしたように顔をあげた。


「えぇ」


私は小声でどうにか返事をすると、足を引きずるようにして、大きなベッドを挟んだ向こう側にある、ロココ調のソファまで足を運んだ。



あれから私が、侍女たちに素早く押し込められたのは、ベッドの頭あった板チョコのような扉の向こう側

――皇帝の皇妃の寝室となる、ベッドルームだった。

静養のため、早々と公務を終え部屋に戻っていたルイナードは、すでに説明を受けていた様子で。突然押し込められた私を見ても、全く驚いた様子を見せなかった。

むしろ、なんの心の構えもなく放り込まれた私のほうが、盛大にパニック状態だ。


夜な夜な物音がすることから、ルイナードがここで就寝していることは知っていたし。

確かに話したいとは言ったけれども。

いきなり、こんな形で共に過ごすことになるなんて⋯⋯


でも――

いつもより念入りにも感じた薔薇油のトリートメント。新品の純白レースのナイトガウン。そして、雨漏りをしていたにしては、なんとなく不自然な部屋。


もしかして、サリーたちが仕組んだとか⋯⋯?

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