秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
 顔も見せてあげられない。詳しく話してもあげられない。あのときの恵麻のキラキラした笑顔を思い返すと、今も胸に鈍い痛みが走った。

 当時、母もこんな気持ちだったのだろうか。

「ママ、いちごはやくたべようよ」

 ぼんやり考えこんでいた私のニットの裾を、恵麻が引っ張る。

「そうだね。食べようか」

 私はいちごのパックを手に取り、病室を出て少し離れたところにある水道へ向かった。

 ひとつたしかなのは、あの夜のあと、私が今日まで踏ん張ってこられたのは恵麻がいてくれたおかげだ。親になって強くなったわけじゃない。あのか弱くなによりも愛おしい存在を守りたくて、ただ必死に生きてきたのだ。

 母が無理をした理由が、私も親になってわかった。
< 102 / 213 >

この作品をシェア

pagetop