秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
「俺がするよ。天音は少し休憩してて」

「えっ? でも……」

 狼狽える私に、相良さんは「いいから任せて」と恵麻を床に下ろしてドライヤーのコンセントを差した。

「やまとさんがかわかしてくれるの?」

「やらせてくれる?」

 相良さんの質問に「うん!」と顔を輝かせうなずいた恵麻に、彼も「ありがとう」と愉快そうに笑って返す。

 カーペットの上で胡座(あぐら)をかいた彼が、自身の脚をポンポンと叩いた。

「さぁ、おいで」と声をかけると、照れ笑いを浮かべる恵麻が、遠慮がちに相良さんの上に座る。ドライヤーのスイッチが入れられ、相良さんの大きな手が恵麻の頭を優しく撫でながら動いていた。

 温風とその手に、恵麻は心地よさそうに目を瞑っている。相良さんも頬を緩めていた。

 そんなふたりの姿を少し離れた場所から眺めていた私の胸に、温かな波が打ち寄せる。
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