秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
 こうしていると、本当にずっと一緒に暮らしてきた親子みたい。……このままこうしていられたらいいのに。

 しかし、温かな波の上へ徐々に冷たい雨が降る。

 次第に切なさでいっぱいになった私が服の上から胸もとを握りしめていると、ドライヤーの音が止んだ。ふいに相良さんがこちらを向く。

「次は天音。おいで」

「私は――」

「ついでだよ。ほら、早く」

 そう手招きする相良さんに、私は弱り切って何度も瞬きを繰り返す。髪を乾かし終えて頬をほこほこさせた恵麻も相良さんの影からひょっこり顔を覗かせて、「ママ、はやく」と私を呼んだ。

 私は当惑しつつも、待ってくれているふたりのもとへ向かう。

 恵麻が嬉しげに「はいどうぞ」と相良さんの上から降りた。すると、相良さんはソファーに腰掛け、私を自分の足もとに座らせる。
< 105 / 213 >

この作品をシェア

pagetop