秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
 ……いや、過去に関係を持って、実は自分の子を黙って生んだ女が同じ職場で働いているなんて嫌だよね。それも結婚したあともずっとなんて、いつか相良さんに迷惑をかけるかもしれない。

 私は、相良さんのそばにいるのもダメなんだ。

「天音? どうした」

 私の異変に気がついた相良さんに、いつのまにか顔を覗き込まれていた。

「どうもしてませんよ。楽しいなって思って」

 私はとっさに顔に笑顔を張りつけて言う。

 今日はいい思い出を作るって決めたのに。彼といると感情を抑えきれない自分が嫌になる。

 相良さんの真剣な瞳に見据えられた。

「無理して笑わなくていい。君のそんな顔を見るのはつらいんだ。思っていることがあったら、隠さないで言ってくれ」

 その言葉に、私は胸が潰れそうになる。

 言えるわけがない。気持ちを伝えれば、あと少しの生活も今すぐに終わってしまう。

 私は息を呑んだ。
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