秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
「相良さん、そろそろ私が……」
「本当に大丈夫だから。それに、マンションだってすぐそこだよ」
動物園を出てから何度も同じ質問をする私に、相良さんが困ったような顔つきで言う。
冬のせっかちな夕暮れは、あっという間に夜に変わった。
閉園近くまで動物園を思い切り満喫した恵麻は、駅で帰りの電車を待っている間に眠ってしまった。それからずっと相良さんが電車の中でも恵麻を抱っこしてくれていたのだ。
先ほどのように交代を提案しても、彼は『天音はそれをよろしく』と自分が恵麻に買ったキリンのぬいぐるみを見て笑うだけで、結局マンションの最寄り駅について私がタクシーに乗ろうと勧めたときも、『せっかく背中で気持ちよさそうに眠っているから』と断られてしまった。
忙しいのに動物園へ連れてきてもらって、これではあまりに申し訳がない。思い惑う私は、弱々しく嘆息を上げた。
すると、駅から離れてざわめきも遠くなった頃、相良さんがおもむろに口を開いた。