秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
「神田? どうしてお前がここにいるんだ」

 男性の予期せぬ登場に、相良さんもいささか呆気に取られた声色で問いかけた。すると、両手を臍の前で組んだ神田さんが、すっと口角を上げて笑顔になる。しかし、その目はまったく笑っていなくて、私はその不気味さに背筋に悪寒が走った。

「近くに寄ったので、久しぶりに大和様のお顔だけでも見に伺おうかと思いまして」

「どうせ社長の命令だろ」

「いえ、私の独断ですよ」

 にっこりと言う神田さんに、相良さんは呆れたようにため息をついた。

 ふと神田さんの視線がこちらにそそがれる。私は息の根が止まる心地がした。

 ……違う。この人は、相良さんの顔を見にきたんじゃない。
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