秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
 今なら恵麻が本当はあなたの娘だと言える。相良さんが想っていてくれた相手が私なら。

 ……ずっと好きだったと伝えてもいいのかな。

 四年も経ってしまったけれど、今からでも三人でやり直せるかもしれない。

「相良さん、実は――」

「おかえりなさいませ」

 なにもかも打ち明けようと発した私の言葉は、突然投げかけられた声によって遮られた。

 私はその聞き覚えのある声に、戦慄が身体を駆け抜ける。過去の記憶の一場面が脳裏を掠め、私は声を辿るように顔を向けた。

 マンションのほうから、硬い靴音がこちらに近づいてくる。街灯の光を受け、その姿があらわになった。

 髪の一本も乱れていない完璧なオールバック。銀縁の眼鏡の奥から、こちらを射抜くような鋭い眼差しが覗いていた。黒のスーツを身に纏う男性を目にした私の胸が、急激に早鐘を打つ。
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