秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
「神田がくる前も、なにを言おうとしていたんだ?」

 彼の熱心な瞳が私を映す。

 ……言えない。想いが通じ合っていたからといって、そう甘くはなかった。

 仮に私が相良さんに恵麻はあなたの娘だと打ち明けたとして、それを神田さんが知ったらどうなるのだろう。あんなふうに現れたくらいだ。なにもしてこないとは思えなかった。

 相良さんに事実は伝えないと約束したのだから、やはり今さら許されないのかな。それに、相良さんの仕事にも影響を与えてしまうかもしれない。

 できるならたとえこのままだとしても相良さんのそばにいたかった。でも、真実を隠し通しすなんて不可能だよね。それに、もしもそうやって一緒にいたとして……いつか相良さんがすべてに気がついたらきっと今より深く彼を傷つけることになる。

 唇を強く噛みしめた私は、痛いくらいにこぶしを握りしめた。

 ……胸が苦しい。

 声を放って泣きたい衝動に駆られた。

 こんなに相良さんが好きなのに。どうして私たちは、一緒にいるのも認められないの?
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