秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
 母のために病院を探してくれて、昨日だって大和さんが仕事帰りにこのバスケットを母へと買ってきてくれた。前に私が、『この病院は生花の持ち込みは禁止なんですね』と院内の貼り紙を見てつぶやいたのを覚えてくれていたのだ。

 改めて、彼の優しさを身に沁みて感じる。本当に大和さんには感謝の言葉もなかった。

 そんな大和さんは、先ほど恵麻を連れて『少し外を散歩してくるよ』と病室を出ていった。私が母と話したいと思っていたのを知っていて気を利かせてくれたのだと思う。

 私は、ベッドのそばに置いた丸椅子に腰掛けた。

「お母さん。大和さんのこと、今まで言えなくてごめんね」

 私が言うと、母は弱りきった表情を浮かべた。

「謝るのは私のほうでしょ。天音にはずっと寂しい思いをさせて。恵麻ちゃんが生まれてからだって、あの頃の私と同じ状況だったのに、あなたを支えるどころかこんなふうに助けられてばかりで」

「お母さんも、こうやって私を育ててくれたじゃない」

 私の言葉に、母がぐっと言葉を詰まらせる。その顔は感慨に打たれたようにゆがみ、下を向いて見えなくなった。
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