秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
「エスコートするよ。お手をどうぞ」

「でも、休憩されたいんじゃ……」

「わけあってひとりでいると難しいんだ。だから君が付き合ってくれると俺も助かる」

 紳士的に、しかし、どこかいたずらっぽく笑う男性の笑顔に、私の胸が早鐘を打った。

 なんて綺麗な顔で笑うのだろう。

「ほら、お願い」

 男性がさらに言う。その低い声がとても心地良くて、抗えなかった。

「じゃあ……こちらこそお願いします」

 彼の骨ばった、指の長い大きな手に手を重ねる。

 温かい。


「行こうか」

 私は導かれながら、百五十五センチの私より二十センチ以上は大きいであろう彼の横顔を横目に見上げた。

 私の視線に気がついた彼が、優しく目尻を垂らして微笑む。私は驚いて、反射的に顔ごと視線を逸らした。

 すぐにふっと小さく笑う声が聞こえてくる。
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