秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
 私は音のほうへ顔を向ける。すると、眠ったはずの恵麻がこちらに駆けてくるところだった。

 にこにこしながら「どーん!」と告げる恵麻が、私と大和さんの間に割って入る。

「恵麻。目、覚めちゃったの?」

「うん。ママたちだけなかよししててずるい」

「ごめん。恵麻もおいで」

 そう言った大和さんが、恵麻を膝の上に乗せ、抱きしめた。

「大好きだよ」

 大和さんの言葉に、恵麻は嬉しそうに肩をすくめて笑う。そして、「えまもだいすき!」と小さな腕で大和さんを抱きしめ返していた。

「ありがとう。恵麻」

 大和さんが噛みしめるように言う。

 私がそんなふたりの姿を眺めていると、ふいに恵麻の視線が私にそそがれた。
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