秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
「退院したらうちにも遊びにきてもらおう。恵麻も喜ぶ」

 大和さんの優しい声色に、私は陽だまりのような愛情を感じる。やはりこの人が好きだな、とつくづく思う。

 私は温もりに心を寄せ、目を瞑った。

「あなたに出会えてよかった」

 私が言い終えると、大和さんも私の頭に頭を預ける。

「俺のほうこそ。君に出会えて、再会できてよかった。あのとき恵麻を生んでくれて、ずっと頑張ってきてくれてありがとう。これからは俺がふたりを幸せにするよ」

 私はおもむろに顔を上げた。慈愛に満ちた表情でこちらを見下ろす大和さんと視線がぶつかり、私たちはどちらからともなく唇を寄せ合う。

 鼻先が触れ合い、唇が重なろうとしたとき。すごい勢いでこちらに近づいてくる足音がして、私たちは弾かれたように離れた。
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