秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
「ママー!」

 仕事を終えて保育所に恵麻を迎えに行った。私の姿を見つけた恵麻が駆け寄ってきて、その笑顔に心底安堵する。

「恵麻。お待たせ」

 先生から荷物を受け取り、恵麻の様子を聞いた。私と先生が話している間なにか言いたげにうずうずしていた恵麻が、保育所を出た瞬間に話し出す。

「きょうね、おともだちできたよ。ににんも」

 小さな手がピースサインを作っていた。

「ふたりも? すごいね。楽しかった?」

「うん! あしたもほいくしょたのしみ」

「ほっ、ほっ」と左右に揺れながら上機嫌に歩く恵麻に、私もすっかり嬉しくなる。

「よかったね。恵麻が楽しそうでママも嬉しいな」

 そう言って笑顔で階段を下りてエントランスホールに向かっていた。

 すると、視線の先に見覚えのあるシルエットが覗く。

 ……相良さん?
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