秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
「ということで宿泊先の目星もついているので大丈夫です。ご心配をおかけしてすみませんでした。……それじゃあ」

 会釈をして立ち去ろうとした私の肩を、相良さんがうしろから掴んで引き留める。振り返ると、相良さんは真剣な顔つきをしていた。

「うちにおいで」

「えっ?」

 思いがけない言葉に、私は驚いて慌てふためく。

「なにを言ってるんですか。行けるわけ――」

「天音」

 相良さんが落ち着かせるような口調で私を諭した。

 彼がどういうつもりで言っているのかはわからないが、相良さんが家族と住む家に私たちが足を踏み入れられるわけない。

「……できません。相良さんと、ご家族にまでご迷惑をかけるわけにはいきませんから」

 いくら相良さんが、恵麻を自分の娘だと知らないからといって……。

 私が伏し目になって返すと、相良さんが「ご家族?」と不思議そうにつぶやくのが聞こえてきた。
< 45 / 213 >

この作品をシェア

pagetop