秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
 深く息を吸い込み、吐き出す。本心では聞きたくはなかったけれど仕方がなかった。

 しばしの沈黙のあと、私は覚悟を決め、意を決して話し始める。

「社内でお子さんと一緒にいるところを見ました。今日、偶然奥様も……」

 そうだ。相良さんには家族がいる。こんな気持ち、持っているだけでもダメなのに。

「お子さんと奥様……」

 相良さんは口に出して考えを確認しているようだった。そして、突然噴き出す。

 私は彼のまさかの反応に空いた口が塞がらなかった。

 どうしてそこで笑うの?

 私が理解できずに顔をしかめていると、相良さんが笑みを噛み殺しながら放った。

「笑ってごめん。だけど、俺には妻も子供もいないよ」

「でも……!」と声を上げる私に、相良さんは「桜介(おうすけ)のことだな」とぽつりとつぶやく。
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