秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
「君は?」

 未だ思考を整理しきれていない私に、相良さんが尋ねる。

「その、結婚。俺の勘違いじゃなければ、恵麻ちゃんとふたりに思ったけど」

 図星を突かれ、言葉に詰まってしまった。

 なんと答えるのが正解なのか。悩んだけれど、結局私は「……はい」と返した。

「一度も?」

 静かにうなずく。栗林さんには私が未婚のシングルマザーなのを話したし、職場が同じな以上、嘘をついてもいつかはバレると思ったからだ。

「そうか」

 相良さんは噛みしめるように言う。すっと伸びてきた彼の手が、私の前髪をさらりと撫でた。

「ずっとひとりで恵麻ちゃんを。大変なこともあっただろう。今日だってこんな細い腕で恵麻ちゃんを抱きかかえて夜道を歩いていた。小さな子でも女性にしたら軽くないはずなのに」

 心から心配してくれているようなその言葉に、涙が滲みそうになる。
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