秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
「……本当にご迷惑じゃないんですか?」

「うん。俺は歓迎してるよ」

 相良さんは目尻を垂らし、緩やかに両方の口角を上げた。

 やはり嘘をついているようには見えなかった。

 さっきのだって、私が提案を受けないのをわかっていたから、恵麻を使ってまでここに帰らざるをえないようにしてくれたんだよね。

 迷いの振り子が止まらない。返答を待つ相良さんの眼差しに耐えられなくなり、私は静かに決断した。

「……それじゃあ、次の家が見つかるまで、お願いします」

「こちらこそ」

 彼の目が優しく細められる。私たちのやり取りを聞いていた恵麻が、「やったー」と拍手をした。

 これでいいのだろうか。

 この期に及んでも決心がつかない私に、相良さんがさっそく「じゃあ、はい」となにかを差し出した。

 これって、鍵とクレジットカード?
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