秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
 そんな私の横顔を見つめていた母が、嬉しそうに目を細めて口を開く。

「天音、前に会ったときより少し顔色がよくなったわね」

 その言葉に、私は「えっ?」と当惑して声を上げた。

 心配をかけたくなかったから、お母さんにはハイツの件や転職した話、相良さんのマンションでお世話になっているというのも話していなかったのに。

 内心驚きながらも、私は今思い出したような口ぶりで「あぁ」と告げる。

「いい条件のところに転職したからかな。前よりは身体もずいぶん楽になってるから、そのおかげだと思う」

「そうなの? よかったわね」

 母の表情がぱっと明るくなる。しかし、次の瞬間、その顔に悲しげな影が差した。

「ごめんね。いつまでもあなたに迷惑をかけて」

「そんなの気にしなくていいから。お母さんは自分の身体のことだけ考えてよ」

 荷物を仕舞い終えた私は、棚の扉を閉めながら言う。
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