初恋交響楽
「あっ、ありがとう…」

わたしは針を取り出すと、ホチキスにつめた。

再び作業を始めていたら、
「本当に人使いが荒い先生だね」

大国くんが言った。

「えっ…ああ、そうだね」

彼も同じことを思っていたことに驚いて、返事をするのが少し遅れてしまった。

「西尾さん、災難だったね」

そう言った大国くんに、
「大国くんの方がもっと災難じゃない?

4月だからって言う理由で指名されたんだもん」

わたしは返事をした。

「逃げられないってヤツだよね…」

大国くんはやれやれと言うように息を吐いた。

よくよく見ると、結構かっこいい顔をしてるな。

彼の横顔を見ながら、わたしはそんなことを思った。

かわいい系かかっこいい系かのどっちだと聞かれたら、彼は"かっこいい”の方に入るかも知れない。
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