初恋交響楽
Chapter4*自分勝手な嫁作戦
時計が8時を過ぎた頃、わたしはカフェを後にした。

時間は朝ではなく、夜である。

「作戦第2弾、スタートよ」

そう宣言するように呟くと、わたしは自宅へと足を向かわせた。

「ただいまー」

ドアを開けて中に入ると、パタパタと玄関の方へ向かってくる足音が聞こえた。

「お、お帰りなさい…」

どこか慌てた様子で大国くんがわたしを迎えた。

わたしはそんな彼を一瞥すると、靴を脱いだ。

「あのさ…」

「何?」

「…今日って、どこかへ出かける予定があったかな?」

大国くんが聞いてきた。

当然の質問だろう。

わたしは彼に何も言わずに、夕食やお風呂の準備をすることなく、勝手に家を出たのだから。
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