初恋交響楽
「野田さん」

わたしは野田さんに話を切り出すと、
「夫に、このことを報告した方がいいでしょうか?」
と、聞いた。

「わたし、離婚がどうとかこうとかもうどうでもいいと思っているんです。

今は夫を助けたい、この危機を何とかしないといけないとそう思っています」

「旦那さんが大切なんですね」

そう言った野田さんに、
「そうかも知れませんね…」

わたしはそう答えることしかできなかった。

恨んでいたけれど、元は好きな人ーー初恋の相手だったのだ。

我ながら本当に今さらである。

「旦那さんに報告しましょう。

今日は旦那さんは家に帰られますか?

できれば、僕も同席をお願いしたいのですが」

そう言った野田さんに、
「帰ってきます、お願いします」

わたしは返事をした。
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