素直になりたい。
「ハム卒業式」

「は?」


ぐずぐずしている私の横でやつが話し出した。


「櫻庭新大は今日ここで鷲尾直禾をハムと呼ぶことをやめます。よって、鷲尾直禾はハムを卒業します。卒業証書の代わりに揚げパンを贈呈します。卒業おめでとう」


さっきから何語を喋ってるの?

次から次へと涙が溢れてくる。

止まらない。

でも、目の前に差し出された揚げパンが妙に神々しくて、私は思わず掴んでしまった。


「はい。では、ハムは卒業で」

「何、これ...。バッカじゃないの...」


私は揚げパンを食べた。

まるで呼吸をするように口に詰め込んだ。

美味しいとか、

不味いとか、

味の感想は浮かんで来なくて

ただ1つ浮かんで来たのは、


「ありがと」


の一言だった。


「なんだ、素直じゃん」

「うるさい」

「んじゃ、俺も食べるな。頂きまーす」


ステンドグラスのカラフルな光に照らされただけの薄暗い部屋で、私達は静かに揚げパンを食べ進めたのだった。
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