i -アイ-



中庭は、緑が多く、噴水なんかもあって、公園のようだった。


それにしてもでかい敷地だ。



「今は暑いから人いないけど、春とかはここでランチしてる女子とかもいる」



「へえ」



お弁当とかじゃなく、ちゃんとしたランチなんだろうよ。



そんなことを考えて、周りを見渡していれば



バシャッ



冷たいものが降ってきた。


目を開ければ、視界には自分の前髪から滴り落ちる雫。


その向こうには、ホースを持って腹を抱えて笑っている旭。



「……てめえ旭」


近づこうとしたところで、滝谷が旭の頭からバケツの水をかけた。


「う、おおお!!!何すんだ岳!!!」


7月とはいえ、急に水を被るのは冷たい。


そこからは水かけ戦争。


あたしは濡れるのはあんまり良くないから避けまくる。


旭に追いかけられるから、とりあえず遠くに避難した。


「……ここどこだ?」


軽く迷子になった。


ベンチに横になる。

静かでいいなここ。


ここに居れば、そこそこ乾くだろ。



「……です」


目を閉じると声が聞こえた。

聴覚がいいとこれだからな。


そこそこ遠い場所の声でも拾ってしまう。


家では休めるように、防音の部屋を借りてるから、家では静かに過ごせるけど、1歩出れば色んな音を拾ってしまう。




< 236 / 457 >

この作品をシェア

pagetop