i -アイ-
どんな思いで、藍の家族は送り出したんだろう。
自分の父親がなぜ死んだのかを突き止めるために、ヤクザの世界にまで入り込む家族の状況を知っていて、正気でいられるだろうか。
藍を取り巻く大人たちの涙に、飲み込まれるように心が苦しくなる。
大の大人が、それも男達が、藍がなりふり構わず子供らしく泣いたのを見て泣き出す。
藍は、そのまま3日、目覚めることはなかった。
脳や体に異常がある訳ではなく、ストレス性のものだとのこと。
「蓮、藍人と連絡つかねえんだけど、なんで休んでるか知ってるか」
滝谷が流石に心配して俺の所へ来る。
「知ってる。過労みたいなもんで入院してる。でも、心配すんな。そろそろ退院すんだろうから」
「そう、か」
他にも心配してるやつは大勢いて、滝谷に皆が集まっていく。
藍は、どこに居ても好かれるな。
俺は心のどこかで少し安心してる。
やっと、藍はゆっくり休めるようになったんだな、と。
自分の手のひらを見て握り締める。
強いものは得るものばかりじゃない。
身を削ってこれまで藍は1人で戦ってきたんだな。
放課後はここ三日と同じ、REIGNのメンツで藍の所へ行く。
「失礼します」
病室には、利人さんが居る。
「どうですか、藍」
「まだだな。冷蔵庫ん中に飲みもん入ってるから好きに飲め」