その夢をどうしても叶えたくて


彼らの過去も凄まじくて残酷だった。


水色担当のちぇばくんは、実はトランスジェンダーで女の子だった。いつも家では虐待されて、それでも頑張って生きてきた。普通じゃないと言われても、彼は笑って生きてきた。私はそんなちぇばくんに尊敬した。どんな逆境でも生きていられるその強さに感動した。


赤色担当のあるんくんは、本当は教師になろうとしていた。そんな時になーせくんと出会って、歌い手になるか教師になるか、ずっと悩み続けていたらしい。それで、『誰かのヒーローになるために』と、この歌い手の道を選んだ。


桃色担当のりょうくんは、私と同じように自殺を考えたらしい。就職活動もあまり上手く行かず、本気で生きることについて考えてしまったようだ。


黄色担当の華虎くんは、音楽の専門学校を中退し、本気でこの歌い手の道を選んだ。そして、自分で作詞作曲をするようになり、カラスタの音楽担当と言われるまでになった。


でも、橙色担当のレオンくんと、私の推しであるなーせくんの過去は謎に包まれている。しかし、彼らもかなりの努力を積み重ねてきたと話していた。


私はそんな彼らを尊敬し、密かに憧れていた。しかし、その夢は絶対に叶わない。


機材の調達、動画の編集、歌の才能、面白さ、親への説得など……様々な課題が見つかってしまう。


『現実を見なさい』


『自分に見合う将来を考えなさい』


先生や親にたくさん文句を言われてきた。私の夢も否定するように。


じゃあさ、私はどう生きればいいの?現実的な良い生き方って何?そんなことを言っても誰も教えてくれない。


親は『歯科医師になれ』とか『師が付く職業に就け』とか言って、カラスタのグッズを買うための約束として持ち掛けてきた。


世界は何一つ自由を与えてくれない。きっと周りの人間も同じことを思っているはずだ。


何が良い将来だ。自分が楽しく幸せに生きていられなければ意味がない。


せっかくの人生だから、自分の好きなことだけをして生きていきたい。


でもきっと、誰もがそう願っているのだろう。だけど、そうならずに自殺者を増加させているこの世界は複雑にへん曲がってしまったのだろう。


私もアナタのようになりたいよ。私もアナタのように輝きたいよ。私もアナタのように……誰かの心を救いたい。



それが無理だと知った今。私は……。




――夢と人生を捨てた。


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