昨日までを愛せますように。
この状況を見て、私を救い出してくれる人なんて居ない。

さて、どうしようか?

こんな嬉しくもない、むしろ迷惑な偶然の出会いなど、いらなかった。

神様は味方なんてしてくれないの?

これ以上、この男とこの場所に居たくない。

助けて……。

気持ちの悪さが込み上げて、冷や汗をかいてきた。

……逃げたい!

……逃げ出したい!!

「……どこかで会っても声をかけたりしないで欲しい。もう、私の事は忘れて欲しい。私もあなたの事は忘れたいの……」

目の前の男がどんなに悲しげな表情をしようと、私にすがろうと、好いている感情などはない。

あるのは"憎しみ"─────……

引き留めようとした男を全力で振り払い、人を掻き分けながら、わざとヒトゴミの中に消えた。

グラスの破片を持った時の傷跡が急に痛み出すような、異様な感覚に襲われる。

今更、痛みなどある訳がないのに……。




もう二度と会いませんように……。




さようなら、私の愛した人─────……
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