王女ちゃんの執事3『き・eye』男の娘、はじめます。
重たい防音ドアを押した瞬間に流れ出てきた腹に響く重たいバスドラの音。
ツインペダルというものを使っているらしいが、おれには奏法やら楽器の名前やらはどうでもいいんだと気づいた町田は、それ以上のことは話さない。
ただ、おれが町田の音を気にいったことだけを素直に喜んで叩いてくれる。
今も、おれに気づいても町田はドラムを叩き続けている。
おれも声はかけず、丸椅子を引きずって黙って町田の真正面に座った。
腹に響く音は、聴くというより感じる音で。
身体が揺れだす頃には、音だけで世界がいっぱいになる。
見えないものに苦しめられる町田がドラムを選んだわけを、この頃はおれも理解していると思う。
――ああ――
いっぱいだ。
音だけでいっぱい。
生きている。
心臓の鼓動だけでいっぱい。
気づくと青いタオルで額の汗をぬぐう町田が横に座っていた。
「落ち着きましたね」
「いやなやつ」
どれほど巧妙に隠されても他人の心の状態がわかるなんて、なんていやなやつ。
「なにから話しましょうか……」
「やばいことばっかだから、おれの顔を見なくてすむように横に座ったんだろが。なんでもこいだ」
「…………」
図星。
はぁ……。
「加藤さん……」
おう。
ツインペダルというものを使っているらしいが、おれには奏法やら楽器の名前やらはどうでもいいんだと気づいた町田は、それ以上のことは話さない。
ただ、おれが町田の音を気にいったことだけを素直に喜んで叩いてくれる。
今も、おれに気づいても町田はドラムを叩き続けている。
おれも声はかけず、丸椅子を引きずって黙って町田の真正面に座った。
腹に響く音は、聴くというより感じる音で。
身体が揺れだす頃には、音だけで世界がいっぱいになる。
見えないものに苦しめられる町田がドラムを選んだわけを、この頃はおれも理解していると思う。
――ああ――
いっぱいだ。
音だけでいっぱい。
生きている。
心臓の鼓動だけでいっぱい。
気づくと青いタオルで額の汗をぬぐう町田が横に座っていた。
「落ち着きましたね」
「いやなやつ」
どれほど巧妙に隠されても他人の心の状態がわかるなんて、なんていやなやつ。
「なにから話しましょうか……」
「やばいことばっかだから、おれの顔を見なくてすむように横に座ったんだろが。なんでもこいだ」
「…………」
図星。
はぁ……。
「加藤さん……」
おう。