王女ちゃんの執事3『き・eye』男の娘、はじめます。
「まえに、おれが話したこと、覚えてますか? 図々しいけど加藤さんのなかに入れてもらうって。それですごくラクになるって――」
「意味わかんないけどな。おれといると、おまえいくらか気楽そうだよな、街中にいても笑うし」
「――はい。それ、虎くん無意識にするんです。だから最初に会ったとき、加藤さんの後ろにいる虎くんに気づかなかった。まったく彼の色が見えなくて」
 それって――…
「空っぽだって…ことか」
 恐ろしさで身体が震えた。
 大丈夫ですとささやいて町田がおれの肩をなでる。
 いつもの逆だ。
「虎くん、加藤さんと完全に同化するんです。本当にびっくりしましたよ。自由自在です。するっと消えちゃう……」
「…………」
「カメラをいやがったときも、おれが波動に倒されたくらい、すごくおびえてたのに、するっと加藤さんのなかに消えて、本来の温かいオレンジ色になってもどってきました」
「…………」
「でも……、あの電話のときは、加藤さんのなかに……逃げなかった。ゆうべはおれのことを知りたがって、好きなものとか、好きなこととか、たぶんおれが答えられそうなことを選んで質問してきましたけど。自分のことは聞くなとやんわり防衛線を張ってきました。強い子です」
「…………」
 頭が真っ白っていうのは、こういうことかとぼんやり考える。
 どうしたいのか。
 なにをするべきなのか。
 おれの頭はまったく考えてくれない。
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