王女ちゃんの執事3『き・eye』男の娘、はじめます。
 駅前のロータリーにあるアイスクリーム屋に虎と五十嵐をふたりで行かせたのは、虎に自信を持たせるためだ。
 おれがやるんじゃ意味がない。
 虎にやらせる。
 おれはなにが起きようとキレずに見守る。
 そう決めて始めたんだから。

「あーあー、ナンパされちゃいましたよ、いいんですか?」
 町田がくすくす笑うのは、表面上は取りつくろっても、おれがイライラと落ち着かないのがわかるからだろう。
「ふん。あれならまーだ、おれのほうがマシだわ」
「えー。そんなのわからないでしょ? とんちゃんには、ああいうやつのほうがイイ男かもですよ?」
「ま…、ち、だぁ――っ」
 立てた中指を背中に隠したのは、五十嵐が虎の手を引いてこちらに向かってくるのを目の端で見たからだ。
「ほーら見ろ。ってか、そろそろ時間だ。五十嵐を頼めるか?」
「はい。終わったら連絡…くれますか? おれ待ちたいです。五十嵐もきっと待つって言いますよ」
 なぜ弟に女装なんてさせるのか。
 なぜ虎が泣いたのか。
 説明なんてしなくても、これが解決策なのだということは町田にはわかるだろう。
 察してくれる相手に説明する言葉をはぶくのは、おれの横着だけど。
 説明しないことが、町田の特殊な力を信じている証になって。
 町田を少しでも慰めてやれればとも思う。
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