真夜中のサイコパス
「今の有島咲良にとって邪魔な人間が二人いる」


浜中美澄はそう言うと、火傷でただれた醜い顔でニヤリと笑った。


「一人は恋敵の木村菜々子。

そしてもう一人は、私の存在に気づいている中川優子だ」


浜中美澄の口から優子の名前が出たとき、私はゾッとして血の気が引いていた。


優子は中学生のときからの親友だ。


今は不仲になって、疎遠になっているけと、それでも優子が私の大切な人であることに違いはない。


私は浜中美澄の幽霊に深い憎しみを感じながら、青白く光る彼女の不気味な姿を見つめていた。


「木村菜々子と中川優子は私の手で排除する。

よろこべ、有島咲良。

お前の敵は私の敵だ」


「なにを言っているの?

優子は私の敵じゃない。

私の大切な友達だよ。

もう私に関わらないで!

これ以上、私を不幸にしないで!」


「お前の体は私の体。

お前の未来は私の未来。

お前の敵は私の敵」


浜中美澄は不気味にそうつぶやき、私の方に体を寄せてきた。


私はそんな浜中美澄を拒絶して、彼女の体を押し返そうと両手に力を込めていた。


でもそのとき、浜中美澄の体は再び白い煙となって、私の手をすり抜けた。


そしてその白い煙は一筋の塊となって、私の口から私の中へと入っていった。
< 174 / 212 >

この作品をシェア

pagetop