真夜中のサイコパス
「そんなに嘆くな、有島咲良」


浜中美澄は目にたくさんの涙をためている私を見てそう言った。


「お前の悩みや苦しみも、もう少しで消えてなくなる。

私がお前の体を支配して、お前の意識を闇の中に閉じ込めるから」


私は浜中美澄の話を聞きながら、真っ赤に充血した目を浜中美澄に向けていた。


私の意識を闇の中に閉じ込める?


この憎き悪霊はなにを言っているのだと思いながら。


「お前がお前でなくなる前に、昨日の夜のことを教えてやろう。

私がどんな風に中川優子を排除したのかを」


浜中美澄の言葉に私の心臓がドキリと跳ねた。


それは私の知りたかったことだけど、ある意味、私が一番知りたくないことだ。


親友を無意識の中で傷つけてしまった私。


そんな罪深い自分を直視することは本当につらいことだから。


「あの日の夜、私は夜道を歩く中川優子をつけていた。

呑気に歩く中川優子の背中を見つめながら、あいつが傷つく姿を想像していた。

中川優子は私の敵だ。

その中川優子がどんな悲鳴を上げるかを想像しながら」


私は浜中美澄の話を聞きながら、固く拳を握りしめた。


やっぱり私は浜中美澄が大嫌いだ。


そしてこんな悪霊に関わってしまった自分の浅はかさに後悔ばかりが募っていた。
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