キミを倒すにはHPが足りてない。
「ごめん、シュナトリア」

「きゃっ!!

……っ、ハーデルケル!!」



彼女を突き飛ばし、遠くへと追いやる。

どうか彼女がここへ戻ってこないことを祈って。



「………盗賊か。俺の命を奪うのは」

「くそ!!!男だけでも捕まえるんだ!!逃すわけにはいかねぇ!!金目のもんを奪うんだ!!」



俺を追いかけようとする盗賊から逃げる気なんて、さらさらなかった。


したがって俺は、彼らに正面から向き合う。




「俺は隣国の王子、ハーデルケル。この国で俺の首を持ちかえれば、服や金品など遥かに超える金が手に入るだろう」



だから、どうか。

どうかこのまま。



「俺を殺せ、盗賊。そして、彼女はどうか見逃してほしい。俺の命をお前らにやるから、彼女だけは………許してくれ」


「ハーデルケル……!嫌よ!!私はそんなの嫌!!

だって二人でこれから先………」



ごめんよ、シュナトリア。

悪魔は神ではなかったんだ。


どうしても叶えたい願いには、それ相応のものを渡さなければいけない。



「金目のもんを持っていそうだと思っていたが、隣国の王子だったとはな。それなら仕方ねぇ………王子に免じて」





グサリ


腹部を切り裂き入ってきた異物が、俺の体に深く差し込み通り抜ける。

身体中の血が沸き立ち、緊急事態を告げている。



「嫌………やめて!!!ハーデルケル!!!」



遠ざかっていく貴女の声が、やけに心地よくて。



「王子に免じて……………と言いたいところだが、俺たちは盗賊だ。この女もまとめて持ち帰れば、どれだけの金が得られるのかな?」



グサッ



「うっ………ぐはっ」

「シュナ……トリア…………っ」
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