キミを倒すにはHPが足りてない。
あぁ、嘘だ。嘘に決まってる。


だって悪魔は言っていたじゃないか。



契約に必要なのは俺の命か彼女の命どちらかだと。


だから、俺は悪魔に言ったんだ。




『俺の命と引き換えに契約を結ぶ』




………それなのに、シュナトリアまで死ぬなんて、そんなの契約違反じゃないか。


なぁ、悪魔よ……違うか?






「ハー………デル…ケル………。これで私たち……ずっと一緒、なの……よね?」


…………違う。

俺はこんな未来、望んでない。


俺が望んだのは…………。





「来世で………また、会いましょ……う。大好きよ………ハーデル…ケル」



目を閉じる君に手を伸ばす。

けれどもう一度、俺がシュナトリアに触れることはなかった。



鉄と皮膚が触れている部分が熱い。

痛みと熱さで頭がぼーっとする。



遠のく意識の中、異形の足を霞みゆく視界に捉えた。





「……ひっ、ひぃ!!!あ、悪魔だ!!!本物の悪魔が………!!!」

【………………まさか、女の方から契約を狂わせてくるとはな】

「や、やめろ……!!!それは俺たちの金…………んぐっはぁ!!」

【おかげで契約が来世に持ち越しだ。面倒なことになったなぁ】



地響きのような声が、どんどんと遠ざかる。



【申し訳ないから一つだけ、お前の願いも叶えてやろう】



あんなに沸き立っていたはずの俺の血は、いつしかひどく冷え切って。



【お前からもシュナトリアからも互いに記憶を消しておく。だから、せいぜい必死に出逢わないよう気をつけるんだ。出逢ってしまえばハーデルケル……お前はいつの世でも死んでしまうのだから】



そして、俺は死んだ。

愛するシュナトリアと描いた未来を掴めずに。
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