カレシとお付き合い② 森君と杏珠




「あと2日だね」


と森君に話しかけられた。
 毎日、委員会があったけど、学祭まであと2日か。
委員が終わったら、森君と一緒にいるのも終わりなのかな。

 委員会のメンバーだから、今年の学祭は一日中お仕事をしている。
 誰と回るとか、森君が誰かと過ごすとか、私一緒に回りたいとか、いろいろ考えなくていいから少し楽だけど⋯⋯ 。


「あんじゅ? 」
「⋯⋯ 」


 気がついたら、森君が心配そうに私を見ていた。


「最近、なんか変だね? どうした? 」


 森君じゃん、と思ってせつなくなった。
 あなただよ、あなたが分からなくて、弱ってるんだよ⋯⋯ 。
 森君が私じゃなくてサエキさんの方に行ったから、なのにこうして話しかけてくれるから考えてるんだよ。


「⋯⋯ 」


 黙り込んで、森君を眺めて、動けなくてじっと見ていた。


「言って欲しいかな? オレに。あんじゅの思ってる事」
「なんで? 」


 なんでそんなことばっかし言うんだこの人。

 私はぐるぐるずっと考えてるから、いきなり言う言葉は、よりにもよって『何で』って森君を責めたようになった
 優しくて心配そうに聞いてくれる森君が、サエキさんに遠慮なく話す姿に重なってズキンと心がした。
 
 関係が深い彼女が他にいて、
 大事な事は何にも言わなくて。

 そんな、当たりさわりない態度を私にもみんなにして、

 でも、私は、そんな彼がいいと思ったんだ。
そこが森君の良いところって知ってるじゃない。
みんなに態度を変えなくて、カッコよくて、甘くて、優しくて、大人みたいで。
冷静で、説得力があって⋯⋯ 。

 でも、もどかしい。

 森君を見ている時はいいと思ってたけど、実際、渦中に入ったらそんな同じような優しさ、もう私は辛いんだ。

 もっと欲しい。

 もっと、深く向き合ってほしい。

 全部話して欲しい。

 もっと私だけをトクベツにして欲しい。

 もっと⋯⋯ 。


「ずっと気になってたからだよ、あんじゅが⋯⋯ 」


森君が私の目を見て言った。


「あんじゅの気持ちが知りたい」

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