契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
「なんか、今の言葉でちょっと気持ちが楽になりました」
「え……?」
「痛くて産めなかった人はいない。っていうの」
どんな言葉が患者を救うかはわからない。
だけど、少しでも自分の言葉が支えになればいいなと常に思っている。
「あ……また、ちょっと痛くなってきたかも……」
「うん、じゃあ時間計っていきましょう。ご主人、痛い時間と、痛くない時間を計ってもらってもいいですか?」
万が一に備えて、女性のそばで経過を観察する。
痛みの間隔と強さにはまだバラつきがある中、飛行機内にはシートベルトサインが点灯した。
自分の席には戻らず、急遽女性のとなりの席でシートベルトを装着する。
少し前までは会話をする余裕もまだあった女性も、次第に強くなってきた陣痛に額に汗を滲ませていた。
横から彼女の腰部に手を入れ、少しでも痛みが紛れるようにさする。
「到着したら、救急搬送で病院に向かえるように手配してもらっているから、あと少し頑張って」
着陸態勢に入った機体は、大きなエンジン音に包まれ、滑走路に車輪が乗ることでわずかに揺れる。
無事に空港に到着したことで、張り詰めていた緊張からわずかに解放されるのを感じていた。