契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました


 桐生さんて、こんなに声低かったっけ……?


 電話越しに聞くと、耳触りの良い心地のいい声に感じる。


『この間の話、考えてもらえましたか?』

「えっ、あ……」


 ベッドに放った紙を振り返り、勢い余って「はい!」と答えてしまう。

 心の中で〝あ、やばっ〟と思ったときには桐生さんが心なしか弾んだ声で『そうですか』と言った。


「あの、考えたというのは、内容をといいますか……」


 佑杏の書いた紙を握りしめ、意味もなく部屋の中をうろうろと歩き回る。


『契約内容、ですか?』

「はい」

『ということは、今回の話は引き受けてもらえると、そういう解釈をしても?』

「あ、はい」


 自分の運命を左右するであろう人生の選択といえる返事を、二つ返事のような調子で返していた。

 電話の向こうから、ホッとしたような『良かった』という声が聞こえると、湧き起こった後悔が押し込められる。

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