契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました


 到着ロビーの傍らにあるソファーに腰かける私に、亜紗美が荷物を運んできてくれる。


「はい、佑華の」

「うん、ありがと。ごめんね」

「ちょっと、大丈夫?」


 ロビーを行き交う人たちをぼんやり眺めながら「うん」とぽつりと答える。

 急な出来事に遭遇したせいか、アドレナリンがすごいのだと思われる。

 気を張っていたせいもあって、今になって脱力感に襲われていた。


「無理もないよ。あんなことが起こったんだから。でも、さすが佑華。あそこで出ていくんだからね」

「……今考えたら、よく出て行ったなって思うよ、冷静になってみると。もし生まれる寸前で、病院じゃないと対応できない難産で……とかだったら、私だけじゃ何もできなかっただろうから」


 飛行機内で急病人が出たとき、今日のようにアナウンスされても名乗り出ないドクターは多くいると聞いたことがある。

 名乗り出たものの自分では対応できなかった場合、何かあれば訴えられてしまうこともあるからだ。

 それを考えると、今日の私の行動は無謀すぎた。

< 13 / 246 >

この作品をシェア

pagetop