契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
到着ロビーの傍らにあるソファーに腰かける私に、亜紗美が荷物を運んできてくれる。
「はい、佑華の」
「うん、ありがと。ごめんね」
「ちょっと、大丈夫?」
ロビーを行き交う人たちをぼんやり眺めながら「うん」とぽつりと答える。
急な出来事に遭遇したせいか、アドレナリンがすごいのだと思われる。
気を張っていたせいもあって、今になって脱力感に襲われていた。
「無理もないよ。あんなことが起こったんだから。でも、さすが佑華。あそこで出ていくんだからね」
「……今考えたら、よく出て行ったなって思うよ、冷静になってみると。もし生まれる寸前で、病院じゃないと対応できない難産で……とかだったら、私だけじゃ何もできなかっただろうから」
飛行機内で急病人が出たとき、今日のようにアナウンスされても名乗り出ないドクターは多くいると聞いたことがある。
名乗り出たものの自分では対応できなかった場合、何かあれば訴えられてしまうこともあるからだ。
それを考えると、今日の私の行動は無謀すぎた。