契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
重そうな玄関扉を開くと、すぐに奥から「おかえりなさい」と女性の声が聞こえてきた。
小走りで出てきたのは、すらりとした年配の女性。
黒髪を後ろでひとつに束ね、ボウタイブラウスにタイトロングスカートを上品に着こなしている。
ひと目見て、七央さんのお母様だというのがわかった。
すっと通った鼻筋と、薄い唇はお母さま譲りのようだ。
出てきたお母様の視線がすぐに私へと向けられる。
張り詰めた緊張の中、体が勝手にぺこりとお辞儀をしていた。
「こちら、宇佐美佑華さん」
「初めまして。宇佐美と申します」
七央さんに紹介されて名乗ると、お母様はすぐに目尻を下げて微笑む。
その柔らかい表情を目の当たりにして、募っていた緊張からほんの少し解放された。
「ようこそ。お会いできるのを楽しみにしていたのよ。七央の母です」
お母さんは「よろしくね」と言い、スリッパを出して「上がって」と迎え入れてくれる。
「失礼します。お邪魔します」
最悪、〝大事な息子を私から取っていくのはあんたね〟みたいな、そんなバチバチなお母様な可能性も視野に入れていた。
その時はとにかく穏便にその場をやりすごそうと覚悟も決めていたけれど、ファーストコンタクト、それは杞憂だったようだ。