契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました


 去っていった客室乗務員が戻り、「お席の準備できました」と声をかけてくれる。


「ご主人、奥様移動させます。万が一、このままお産の運びになった場合、少しでも安心して出産に挑めるように準備しましょう」


 私にそう言われた男性は、「は、はい!」と女性の体を支え「大丈夫か? 少し歩けるか?」と立ち上がらせる。

 子宮口の開き具合を診てみないとなんとも言えないけれど、私のこれまでの経験上、まだ時間に猶予はあると予想する。

 経産婦であれば一気にお産が進むことが多いけれど、初産はたとえスムーズな安産だったとしてもそれなりの時間を要する。

 他の乗客から離れた端の座席に移動すると、客室乗務員たちが周囲に立ち、見えないよう配慮してくれる。


「あの……私、ここで、産むことになるんでしょうか……?」


 一旦痛みが引いた女性が、私へ不安そうに声をかけてくる。

 ちょうど届いた滅菌グローブを受け取りながら、女性の横になるすぐ横に腰を下ろした。


「もしそうなったとしても、大丈夫。ママは、赤ちゃんに会えることを楽しみに、それだけを考えていて。ママが不安になるとね、赤ちゃんにもわかっちゃうのよ?」

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