契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
「お紅茶のおかわりはいかがでしょうか?」
初老の男性スタッフが木箱を手に再び席へとやってきて、次の紅茶を尋ねられる。
次はストロベリーティーを選ぶと、桐生さんはカモミールのハーブティーを頼んだ。
改めて紅茶が入ると、桐生さんはティーカップを手に鼻を近づけ、ハーブティーの香りを確かめる。
その何気ない仕草も絵になっていて、カップを手にしたもののついじっと見つめてしまっていた。
いかんいかんと心の中で独り言を呟き、誤魔化すように入りたての紅茶に口をつけた。
「なんか、あの時と今日は印象が違いますね」
「印象、俺の?」
「はい。失礼かもしれないですけど、なんかもっと話しづらい方だと思ってました。ごめんなさい」
アルコバレーノの廊下でふたりきりで話したあの時、どこか威圧感というか、何か切羽詰まったような感じを受けた。
だけど今日は、話しやすいし居心地も悪くない。むしろ、自分のことを必要以上に話してしまったくらいだ。