契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
「あ、すみません……私、ひとりでずっと喋ってしまって」
「え? そんなこと全然。むしろ、いろいろ話してもらえて嬉しいよ」
そんな風に言ってくれているけれど、これは私の中でかなり喋りすぎている。
男性と一対一で話す機会自体そんなにない私だけど、こんなに自分のことを話したことなんて今までない。
少し付き合った相手ですら、基本は聞き手で自分のことを話したことは記憶に残っていないくらい少ない。
桐生さんが話しやすい雰囲気を発しているからなのか、不思議と自然に言葉が出てきていた。
桐生さんのほうも時間が経つにつれ話し方がリラックスしてきたようで、硬い敬語が少なくなってきているように感じられる。
「そういえば、この間の会は付き合いで参加したって言ってたよね?」
「えっ……! あ、それは、えっと」
「正確には、言いかけてた、が正しいかな。ああ、大丈夫。俺も同じような感じだったから」
「え……? 桐生さんも、人数合わせの付き合い、みたいな感じだったんですか?」
もう誤魔化さずにはっきりと口に出して訊いてしまうと、桐生さんは大したことなさそうに「そう」と頷く。
でも、それには妙に納得ができる。
だって、そんな出会いの場に自ら参加しなくたって、桐生さんなら勝手に女性が寄ってくるはずだからだ。
きっと、桐生さんが参加すれば女性陣も盛り上がるだろうみたいな理由で無理矢理誘われたのだろう。
私と同じく、あの席への参加は〝仕方なく〟という感じのようだ。