やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない
「君はあれか」

 三浦部長が拗ねたように言った。

「僕と買い物するのはそんなに退屈か?」
「べ、別に退屈とかでは」

 面倒くさいことになってきたなぁと無言で嘆息する。でも三浦部長の拗ねた表情は改めて見ると子供っぽくて可愛い。

 じゃなくて。

 私は必死で言い訳を探す。どこかに正答はないものかと中空に視線を走らせるがもちろんそんなものは見当たらない。

「まあいい」

 三浦部長が私から目を逸らした。

 その目が僅かに寂しそうに思えたのは気のせいだろうか。

 陳列棚に置かれたマフラーの一本に彼が手を伸ばす。クリーム色のそれはシンプルなデザインでどこか懐かしい印象があった。とはいえ私がそれを首に巻いた記憶はない。

「これなんかどうだ?」
「……」

 どうだ、と言われても。

 私へのプレゼントじゃないし。
 
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