破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】
 頭領は手でパンをちぎりながら答える。

「そいつは買い手がつかないモンだろ? 料理本は買い手がついてうちにはもうねぇよ」

 パンをトマトスープにひたして食べる頭領が「この食べ方もいいな」と満足そうに飲み込んだ。

(買い手がついた……どうしよう。誰が買ったのかわからないと行き先を辿れない)

 怪しまれるかもしれないけれど、ここで情報を知っているのは売った者だけ。

 アーシェリアスは、意を決して口を開く。

「どんな方が買ったんですか? 料理好きな人?」

「なんだお嬢さん。そんなに本が欲しかったか? つーか、本だけじゃなく買った奴にも興味があるとは珍しいな?」

 頭領がアーシェリアスをジッと見つめる。

(ひぃっ⁉ う、疑われた?)

 緊張に心臓がドクリドクリと脈打ち、アーシェリアスは必死で平静さを保った。

「あります! 料理好きな方なら、珍しいレシピを知っていそうなので話してみたいですから」

「珍しいレシピ?」

「はい。私、異国の料理とかにも興味があって、そういった本を集めていたりするんです」

 これは本当だった。
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